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複数所有のオーナー、要注意! 売却時に”消費税が発生する”ケースをご紹介

個人事業主や法人経営をしていない、一般個人のオーナーなら本来「無縁」であるはずの消費税納付。複数件の投資用ワンルームを売却する場合、「売却したタイミング」により支払う義務が生じることがあります。

いったい、どんな状況が該当するのか……。今回は、この仕組みと実務上の影響を簡潔に整理してお伝えします。


売却価格の「建物部分」が課税対象となる

そもそも、消費税は「売却価格の全額」が対象になるわけではありません。売却価格は「建物」・「土地」の内訳によって構成されており、このように分けられます。

■ 建物は減価償却され消費される資産消費税の課税対象
■ 土地は消費されない資産 → 非課税(対象外)
■ 内訳の按分方法:売買契約書に消費税の記載がなくても、建物土地の比率計算にて算出可能

仮に「売却価格2,200万円」・「建物と土地比率が1:1」だとすれば、「建物価格1,100万円」となります。この「建物価格がいくらなのか」が、大きなポイントです。

※2025年時点の傾向:
建物と土地の比率に関して、新築時は「建物6~7:土地3~4」ほどが一般的です。これは、投資用ワンルームは土地の持分比率が低いため、相対的に建物部分の比率が上がることが理由です。
しかし近年、中古物件の増加(=減価償却による建物価値の逓減)や地価上昇により、建物比率は低下傾向にあります
実務ベースでは、東京23区内の投資用ワンルームに限ると、「建物比率4~5割前後」というケースが増えています。


消費税が発生する条件

消費税の納付義務がない場合を「免税事業者」、消費税を納める義務があると「課税事業者」と呼びます。投資用ワンルーム売却に際し、建物部分の売上合計が1,000万円を超えると課税事業者に該当します。
この場合、「通知や届出が必要」ということはありません。対象期間の売上1,000万円を超えた場合、「自動的に課税事業者になる」ため、ほとんどのオーナーさんは「自身が消費税納付の義務がある」ことに気付いていないのです。

課税事業者になる条件は、下記のとおりです。

  • 年間基準
     その年の建物部分合計が1,000万円超 → 2年後』から『2年間』課税事業者となる

  • 上半期基準(特例)
     その年の「1〜6月」の建物部分合計が1,000万円超 → 翌年』から『2年間』課税事業者となる

同じ1,000万円超でも、売却(引き渡し)した時期によっては翌年から影響するため、注意が必要です。
また課税事業者となった期間中も同様、その間の売上額に応じてそれ以降の「期間継続か終了か」が判定されます。


累計での判定と具体例

  • 例1:2025年5月に契約~8月に引き渡しの実施(売買価格2,200万円・建物土地按分1:1)
     建物部分=1,100万円 → 当年合計1,000万円超 → 2年後の2027年より課税事業者化

  • 例2:2025年5月に契約~6月に引き渡しの実施(売買価格2,200万円・建物土地按分1:1)
     建物部分=1,100万円 → 当年上半期の合計1,000万円超 → 翌年の2026年より課税事業者化

  • 例3:課税事業者期間に売却(2,400万円・按分1:1)
     建物部分=1,200万円 → 該当する消費税額の納付義務が発生

 

【ポイント】
■ 複数件を分けて売却しても、同じ年の累計で判定されます(引き渡し日基準)
■ 課税事業者の期間中、「課税対象となる売上が1,000万円以下」の場合、2年間で課税事業者ではなくなります
■ 期間中の対象売上は主なところで、「投資用ワンルーム売却の建物価格」「税込の賃料収入」「事業としての収入」「事業用資産の売却価格」が挙げられます
個人用途の売却に関しては対象外となり、「自宅の売却」「自家用車の売却」などは該当しません。ただし「別荘やセカンドハウスの売却」はグレーゾーンです
※詳細に関しては税理士や税務署へお問い合わせください


現実的な扱い(自己申告制)

ここからは、「実際どうなるのか、なにをする必要があるか」について触れていきます。

投資用ワンルームを売却した場合、「課税事業者かどうか」は『自分で確認する』ことが必要です。
「貴方は課税事業者になりました」など、税務署から自動的な通知が来たり、消費税額の請求書・納付書が来ることはありません。課税事業者かどうかの確認や、該当期間の「消費税の申告~納付」は『すべて自己申告』が前提です。

投資用ワンルームの買主として中心となる「不動産会社(宅建業者)」側が、「この個人売主は課税事業者かどうか」を逐一チェックすることもあまりありません。
そのため、投資用ワンルームの売買契約書は「売主が個人の場合、消費税表記がない」ことがほとんどです。

税理士やファイナンシャルプランナーなどに相談した場合、指摘や注意が入ることがあります。そうでない場合、「オーナー自身がこの制度や仕組みを正しく理解している」ことはめったにない、というのが実務ベースでの率直な印象です。

ただし、もちろん『知らなければそれでいい』とはなりません。
「複数年にわたり、複数件を売却する際の要注意事項」として正しく認識して、出口戦略に正しく落とし込む必要があります。


気をつけたいポイント

売却計画の立て方

■ 「その年の上半期・下半期」と、建物部分の累計売上額を試算
■ 固定資産税評価や確定申告資料を基に、建物・土地の按分比率を把握
■ 基準額(1,000万円)超過の場合、売却タイミングの分散や見直しも検討

課税事業者期間中の売却

■ この期間に売却すると「建物部分の売上額」に消費税負担が発生
■ キャッシュフローへの影響を事前に試算しておくことが重要

不動産以外の課税売上

■ 副業などの事業収入や、事業用資産の売却も対象
■ 自宅の売却など「事業性のない」ものは対象外
■ 不動産以外の収益も含めて、総合的なモニタリングが必要


まとめ

課税対象は建物部分のみ、土地は非課税

建物部分の売上合計1,000万円超で課税事業者に該当

★ 上半期集中売却は翌年から影響通年は2年後から影響

★ 実務は自己申告ベースなため、制度と現場にギャップがある

★ 複数所有オーナーは売却計画と累計試算を前提にした戦略設計が不可欠

投資用ワンルームの売却は、単純に「高く売れるか・安くなるか」という視点だけでは不十分です。売却の適切な時期を見極める必要があり、特に複数戸を所有している場合、物件ごとに「売るか・持つか」を検討する必要も生じます。

こうした判断は、税務や市況、資金計画など複数の要素が絡むため、ご自身だけで適切に結論を出すのは至難の業です。だからこそ、実務を理解した専門会社の視点・提案を交えながら「いつ・どの物件を売るのが最適か」をシミュレーションすることが、結果的に大きな差につながります。当記事を読んで「自分はどうなんだろう?」と思われた方は、下記リンクより査定依頼へお進みいただければ幸いです。



※本記事は、投資用ワンルームをすでに所有しているオーナー様に向けた情報提供を目的としています
※本記事の内容は税務上の取り扱いについて法的な正確性を保証するものではありません。実際の課税判定や申告にあたっては、必ず税務署または税理士などの専門家にご相談ください


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